解脱(げだつ)とは

お釈迦さまが、辛いことがあって苦しんでいる娘さんに説いたお話です。
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ある所に、毎日、荷物を満載した車を、朝から晩まで引かねばならぬ牛がいた。
つくづくその牛は思った。「なぜオレは、毎日こんなに苦しまねばならぬのか」
そして、「そうだ、オレを苦しめているのはこの車だ。この車さえなければ、苦しまなくてもよいのだ。よし、この車を壊そう!」
牛はそう決意し、猛然と走って大きな石に車を打ち当て、木っ端微塵に壊してしまった。
驚いた牛の飼い主は「こんな乱暴な牛には、余程頑丈な車でなければ」と、鋼鉄製の車を造ってきた。それはとても頑丈で、今までの車の何十倍の重さであった。以前よりさらに苦しむようになった牛は深く後悔したが、後の祭りであった。
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苦しみの原因は様々あると思います。ですがこの牛のように、それを壊せば楽になるわけではありません。返って余計に苦しむことになる場合もあるのです。
ならばどうするべきなのか、仏さまの教えとは、その苦しみから逃れる=解脱する方法を説きました。解脱は{悟り}や{涅槃の境地}や{自在}とも同義ですが、その方法は大まかにわけて二つの方法があります。
一つ目が慧解脱。たくさんある仏教の教理を学び、体得していく方法です。
二つ目が信解脱。疑いをなくし、信じることにより救われる方法です。
難しい教理を知る必要はありません。「以信代慧」といって、信じることが智慧の代わりになるからです。
皆さまはどちらがお好みでしょうか?

 

日蓮聖人のお言葉

苦を苦とさとり、楽ひらき、苦楽ともに思い合せて南無妙法蓮華経とうちとなへゐさせ給へ、これあに自受法楽にあらずや、いよいよ強盛の信力をいたし給へ
【訳】苦しみから逃れようともがきもせず、楽を得ようと焦りも欲張りもしない。ありのまま南無妙法蓮華経とお唱えし、受け取ってゆく。それが「自受法楽(歓びの境地)」です。
いっそうの信心を貫いていきなさい。